tenにて個展「draft」を行いました。タイトル通り、図面・製図がこの展示のテーマです。
図面は2020年に入ってから描くようになりました。
今までは0.0001mmまで設計できるCADで3D図面を作成し、
CADの図面を元に手作業で作品を制作していました。
こうして出来上がった作品はCADでひいた0.0001mmの世界から遠ざかり、
一つ一つに揺らぎが生まれます。
ものづくりが機械化される前は職人がまるで機械のような精度でモノを作っていました。
一見すると同じ姿形でも、よくみると極く僅かに揺らぎが感じられる。
僕がCADと手作業を行き来するようになったのは、この揺らぎを作品に取り入れたかったからです。
しかし、CADによる図面は次第に作品との間にギャップを生みはじめました。
CAD上に描かれた数値通りのカチッとした形は自分の作品とは思えず、
また、図面がデータでしかなく実態が無いことにも違和感がありました。
このギャップを埋めるべく図面の在り方を再検討し行き着いたのが、手描きで図面をひくことでした。
でも、精度の高い3Dの図面が存在しているこの時代に手描きの図面の存在理由がありません。
描きたいけど必要ない。
振り子のように考えが右にいったり左にいったり。とにかく習作を描いてみる日々。
何枚も描きながら出した答えは、既存の製図のルールは無視して自分の製図ルールを設定して描くことでした。
ルールは細かい設定もありますが重要なのは一つだけ「図面を再度見た時同じ作品を作ることができる」です。
こうして図面のようなドローイングのようなモノが出来上がりました。
僕が見ると「図面」です。立体的な作品が瞬時に想像できます。
他の人にとっては「絵」に見えるのではないかと思います。
お客さんに僕の見方を説明すると、彼らの中で「絵」が「図面」へと変化していきました。
その様子がなんだか面白かったです。
いずれ絵のような図面のようなモノだけの展示がしたいと思うようになりました。
その前に絵のような図面のようなモノに固有名詞を付けなくちゃいけないなと思っています。
場所 ten
期間 2020年 8月1日−16日
店主 山本紗江
什器制作 河合広大 岡田直也
DMデザイン 安齋朋恵
写真 三木ジェイミー
額制作 AoMidori