tenにて2020年の個展「draft」に引き続き、2021年は個展「draftⅡ」を行いました。
展示タイトルにもなっている平面作品「draft」に関しては2020年のarchiveに書いたので説明を省略します。
今回は展示構成について振り返ってみたいと思います。
会期は8月7日から8月16日までの10日間を前期と後期に分けました。
前期は黒釉薬の作品だけを展示して、後期から白釉薬七宝の作品を追加しました。
2020年の展示は白釉薬の作品だけの展示だったので、前回と今回両方見てくれた方はギャップを感じたのではないでしょうか。
まずtenに入ると白い空間に黒い作品が浮いて見えます。白黒コントラストが強すぎて作品の黒さが際立ちます。
作品との距離が縮るにつれて真っ黒い作品が黒い作品になります。
手で持ってみると黒い作品は黒ではなく様々な色の集合体であると気がつくはずです。
集合体を光が当たるところまで持っていくと、最奥にある銅の素地がキラキラと光ります。
この光をこの展示の終着点としました。家を出てからここまでが短い旅のようになったらいいなと思いました。
会期中は真夏日に加え、悪天候に見舞われて厳しい旅路となってしまいました。
来てくださった方には申し訳なかったです。
作品が無くなるにつれてtenの白い空間が露出していきます。
後期になると白い作品が追加され、黒かったはずの空間はどんどん白へと変化していきます。
前期と後期に分けた理由は展示を流動的な時間を感じる構成にしたかったからです。
こういった構成を考えることも展示の楽しみの一つです。
夜空が次第に明るんで朝を迎える。
そんな一夜の出来事を10日間かけてtenで再現したいと思いました。
題材にしたのは下道基行さんの作品『Dusk/Dawn』
この作品は日本熊本県葦北郡津奈木町の海岸で夕暮れの空を30秒間隔で夜になるまで撮影し、
同時刻に対岸のアメリカ合衆国シカゴ州では夜空を30秒間隔で朝になるまで撮影した写真作品です。
これは写真集にもなっていて、個人的にはこの写真集を超える本という媒体の使い方はないのではないか。と思っています。
“地球のどこかの朝と夕暮れが同時に起こっている、そんな当たり前にどこでも起こっていることを写真で見つめ直します。
アメリカと日本の空のグラデーションのみの本体。世界のどこかではじまりと終わりが同時に起こっている。” (HPより抜粋)
自分の作品を購入してもらうことで物が無くなり空間が変わっていく。
展示販売では当たり前のことなのだけど、当たり前としないで違う角度から見直したい。
景色をみるような感覚で見てみたらどう見えるのだろう、そんな思いで展示期間中を過ごしました。
今後も”売る”と”買う”という最低条件は覆すことなく、
どこまで空間を表現として使うことができるのか考えながら慎重に展示を作っていきたいです。
場所 ten
期間 2021年 8月7日−16日
店主 山本沙枝
什器制作 河合広大 岡田直也
デザイン 安齋朋恵
写真 三木ジェイミー