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今回の個展は「器の用途」がテーマの展示でした。
イントロダクション+3つの展示で構成しています。
LOGの入り口を抜けると最初に対面するのはジョセフ・コスースの代表作
「One and three Chairs」の展示様式を模した「器について」という作品。
今展のイントロダクションにあたります。一度固定観念を無くし
自分の器をフラットな目で見るための装置となる作品です。

次のスペースに進むとインスタレーション作品「not on the table」が広がります。
器の用途を自由に解釈した結果この作品が出来上がりました。
今まで「食器」の用途しか持っていなかった器に
回る、傾く、鳴るなどの動作を加えて異なる用途を与えました。
オリーブの植木に紐を引くことで切り替わるスイッチが繋がっており、
風が吹き植木が揺れるとスイッチが切り替わり機能する器が替わります。
会期中どこかしらの器が機能して会場には器の音が鳴り続けました。
ちなみにタイのお寺から聞こえる音に似ているそうです。
“人以外の何かが干渉して器に用途が生まれる”ということをしたいと思っていました。
以下、この作品のきっかけとなったメモ。

“いつの間にか器作家と呼ばれるようになった。
器を作っています。と自己紹介で言うようになった。
とても満足している。
器作家とはなんだろうか。
食器、花器、茶器、陶器、容器、漆器、機器、楽器、什器、鈍器、凶器、臓器
器とつく言葉はたくさんある。
どの器を作ったとしても
器作家と呼ばれ続けるのだろうか。”

二つ目の展示は「room 303」
客室で行なった宿泊者限定公開の展示です。
客室で使用する器や飾ってある作品を自分の器に置き換えて設えるという内容。

以前、泊まったビジネスホテルで「電気ケトルで袋麺を調理しないでください。」
という張り紙が貼ってありました。
迷惑行為であることに間違いないのですが
本来お湯を沸かすための道具のはずが、ある人にとっては調理器具だった。
ということがなんだかおもしろいなと思い記憶に残っていました。
宿泊者の方が自分の器をどのような用途で使うかはその人次第です。
そして、それを知るすべはありません。

LOGの客室で誰かが器を使用している(してないかもしれない)状況が
展示期間中に共存していることが「器の用途」をテーマにする上で大事なことでした。
会期中は「room 303」の様子をまとめた冊子を会場に置いていました。

三つ目の展示は「Hirose You solo exhibition in LOG」です。
過去行なってきた展示と同じ形式の展示販売会です。
ただ、上記の展示が同じ建物内で行われていることで今までと違う展示に見えました。
オープンスペースでは今までにない用途で機能し続ける器があり、
客室では宿泊者の方がその人なりの使い方で器を使っている。(かもしれない。)
そのことが頭の片隅にあると、不思議と目の前にある器が「食器」から「まだ用途のない器」に変化します。
そして「食器、花器、茶器が並ぶ展示会」 から「まだ用途のない器が並ぶ展示会」へと変容していくのでした。

以上が展示を作った作者の目線です。
「まだ用途のない器」に見えるようになったとして何かが変わるわけではありません。
並んでいる器は同じ形をしているし、食器として使えばちゃんと食器として機能します。
ただ器に対する認識がちょっと広がった気がして、その“ちょっと”が自分にとって大切でした。

場所 LOG
期間 2023年 10月7日−10月31日

支配人 小林紀子
展示担当 平山千晶
デザイン 安齋朋恵
什器制作 AoMidori
協力 LOGのスタッフのみなさま 永瀬二郎 渡辺萌 中村鷹聖 
展示写真 平山千晶 安齋朋恵